タイトル
著者
出版社 形態 発表年(初出)
源義経
(講談社・全5巻)
(学陽書房・全4巻)

村上元三
講談社/学陽書房 文庫 1951〜66
  NHK大河ドラマ化・1966年(昭和41年)
数多の義経小説の中で文句なく一番におすすめしたい王道的「義経記」。日本人が古来より大切にしてきた義経のイメージそのままの強く優しく美しい理想のヒーローがそこにいます。終始義経サイドに寄り添った情緒的な作風で、義経を取り巻く人々も皆個性的であたたかく、だからこそクライマックスがたまらなく悲しくて感動的。読後のカタルシス作用は絶大です。こういう場合えてしてイヤミな悪役にされがちな頼朝がクールで威風堂々とした人物として描かれているのも特徴的。1966年大河ドラマ「源義経」の原作本ですが、2005年の「義経」もこれが原作だったらもっとおもしろくなったのに!この小説の義経と滝沢義経のイメージは限りなく近いです。
★★★★★
  
源義経(全)
〜その波乱の生涯を
一冊で〜

小山龍太郎
日本文芸社 新書 1966
NHKテレビ「源義経」いよいよ開始!怪童牛若丸から非情な運命にたおれるまでの波乱万丈の生涯!! 勇あり!義あり!涙あり!この感動のドラマでテレビの興味を百倍に!
1966年NHK大河ドラマ「源義経」の副読本的小説。巻頭にドラマの配役一覧が載ってます。義経の生涯がダイジェスト的に捉えられるごくプレーンなストーリー。ラスト章「伝説の章」では、義経ジンギスカン説や義経のカノジョたちのプロフィールなんかも載ってます。
★★★
源義経
孤独の生涯

邑井操
大和書房 新書 1966
  オーソドックスな義経一代記。終始義経に同情的な視点で描かれていてオリジナルエピソードもちょこっと。洗面用の熱い金タライを義経に持たせるサディスティック頼朝、手のひらがジュッと焼けても耐えて持ち続けるマゾヒスティック義経。いや、別にそういうケの話じゃないんですが。
★★★
  
花の義経

大塚雅春
潮出版社 ソフトカバー 1968
  黄瀬川の兄弟再会のシーンから始まるセンチメンタルな義経一代記。義経がひたすらケナゲなイイ子です。郎党たちはそんな義経にぞっこん(死語?)。見どころはイジワル土肥実平と、とっても「いいひと」高階泰経。他作品ではまず見られない性格設定です。あと、政子もどういうわけだか何かにつけて義経に肩入れしてくれる。ホントにこんな政子ならよかったんだけど。
★★★★
  
源義経
(物語と史蹟を訪ねて)

土橋治重
成美堂文庫 文庫 1972
  ※04年に『源義経』として加筆修正、改題の上再版
「史蹟探訪」「スポット」のコラム付。時代背景・位置関係が手に取るように分かる。
「義経記」「平家物語」などからの引用を主体とした、義経入門テキスト本として最適の一冊。これでおおよその一般的な義経像はつかめましょう。史蹟めぐりのガイド本としても便利。ただ、彼の場合はそのほとんどが「伝説」なのですべてを鵜呑みにはできませんが。
★★★
  
義経
(上下)

司馬遼太郎
文芸春秋 文庫 1977
  歴史小説界の至宝・司馬遼太郎が描きあげた(暴き立てた?)、みんなの英雄義経の真の姿!いくさバカ、政治能力ゼロ、情緒不安定、女好き、ブラコン。従来のこぎれいな義経像を叩き壊してやる、という意気込みをびしばしと感じます。しかし当時の義経ファンの拒否反応たるやすさまじかったようで話が中途半端なところ(義経都落ち)で尻切れトンボに終わっているのはそのせいか。天下の司馬作品なのだからと声をひそめていましたが本当は私もムカついてた。(笑)まあこの義経も愛嬌のあるカワイイ奴なんだけど…。司馬先生は思い入れのある人物とない人物で描き方に差がありすぎるのが愉快でもあり難点でもあり。ともあれ義経のことはあんまり好きじゃないみたい。
★★
  
源九郎義経
(上下)

邦光史郎
徳間書店/学陽書房 文庫 1980
  後半はほぼオーソドックスなみんなの知ってる義経一代記ですが、元服前の遮那王時代が描かれた上巻はオリジナル度が濃く読みごたえがあります。ことに瀬戸内海で水夫見習いとしてコキ使われる義経の姿は目新しい。途中から登場する弁慶がまた出色のキャラ。寡黙で忠実、静のヌードを見てもビクともしない超然としたミステリアスな僧。それでいて、義経に「ずっとそばにいろ」と愛の告白のような命令をされてうれしそうに照れるのがカワイイ。
★★★
  
源義経

長部日出雄
学習研究社 ハードカバー 1982
  ※富士見書房より文庫として90年に再版
特別書きおろし長篇  義経は現代の長島だ。頼朝は川上に似ている。天才プレーヤーが政治に敗れ去る悲劇の過程を、見事に捉えた鮮烈な義経像。
弁慶は熊野ではなく羽黒出身の僧、など新たな解釈が端々にほどこされた要チェックな義経一代記。しかし真の見どころは巻末付録の著者と尾崎秀樹氏の対談コーナー(学研ハードカバー版のみに収録)。義経というキャラクターについていろいろ語られていて面白いです。義経に似た人物…長島茂雄、太宰治、スサノヲ、石川啄木…?
★★★
  
源義経

永岡慶之助
学陽書房・人物文庫 文庫 1985
  源平争乱の時代を華々しく生き、そして散り急いだ悲劇の若武者の生涯!
歴史人物小説シリーズ「人物文庫」の一冊、義経編。義経の人生がわかりやすく描かれています。どちらかというと義経より郎党たちのサイドストーリーに重点が置かれており、伊勢三郎と京のカノジョのエピソードなんか、なかなか濃いです。
★★★
  
生きよ義経

三好京三
新潮社 ハードカバー 1990
  ※PHP文庫より文庫「源義経」として再版
兄頼朝の密命に従い、腰越から京へ引返した義経は、もう一組の義経主従を結成、別ルートで平泉を目指す。幕府内部をも欺き弁慶と果てたのは誰か?――新解釈で、悲劇の英雄を描き、話題を呼ぶ時代小説!
タイトルの「生きよ義経」は、頼朝の心の叫び。この兄弟は、実は仲がよかった!(らいいのに)と思っていた私には実にうれしい物語です。義経都落ちから頼朝の奥州征伐までを、頼朝、義経、政子や静らのそれぞれのひとり語りの形式で追っています。互いを信じたい、でも…という兄弟の葛藤が全編にわたってひしひしと感じられます。ただ、義経と瓜二つの影武者が登場し、いったいどっちが本物なのかだんだんわからなくなってくるので、オツムの弱い私などはかなり真剣に悩んでしまいました。
★★★★
  
源義経
(シナリオ本)

杉山義法
日本テレビ ハードカバー 1991
  源九郎判官義経かくも華麗なる悲劇〜平安末法の世に彗星のごとく現われ散っていった悲劇の武将源義経を描く〜
「年末時代劇スペシャル(日本テレビ系)」として野村宏伸主演で放送された時代劇「源義経」のシナリオ本で、原作は村上元三の「源義経」です。でも村上本のイメージに野村義経はちょっと…。まあいいや。カラーグラビアもあってお得です。
★★★
  
義経の刺客
(上下)

山田智彦
文芸春秋 ハードカバー 1992
  源頼朝、義経兄弟の骨肉の争いを描く長篇時代小説
(上巻)源氏の再興に賭ける義経に対して激しい対抗意識と殺意を抱いたのは実の兄・頼朝であった!
(下巻)頼朝への怨念と復讐心から頼朝暗殺の“刺客”に選ばれたのは頼朝の実の娘・朱矢であった!

中盤まではふつうの歴史小説、というよりほとんど司馬遼太郎「義経」。ただしオリジナル女性キャラ多し。彼女らが義経にからんでどんどん子供をつくるのだ。純情で女の子に優しい義経、よくモテます。そして後半、突如舞台がモンゴルに移り一挙にスペクタクルな展開に。どうする義経、どうなる頼朝、どうなってるんだジンギスカン。それにしても頼朝の人物像はボロクソです。たんなるヒクツなすけべ野郎。弟から預かった少女を手ごめにしちゃうわるい奴!
★★★
  
風譚義経

古田十駕
文芸春秋 ハードカバー 2001
  悲運の若武者、孤高の矜持。〜悲運の武将・義経が辿った足跡を、平安時代末期の風俗、因習を含めて、克明に描き出した大作。歴史の中の一陣の風、義経の波瀾に満ちた生涯が今、物語となって蘇る。
617ページにも渡る大長編。重厚な文体と壮大なストーリーは読みごたえ充分。義経が純粋でなおかつ賢い美青年なのでうれしい。
★★★★
  
九郎判官

領家高子
講談社 ハードカバー 2001
  義経をめぐる清冽な人想いの雅歌!〜幻の人の香、匂やかな男の悲劇を描く大型新人の透明な文体〜
「吉野の弁慶」「西行と頼朝」「太夫黒」「千本桜」「耳裂け鹿」の5編収録。人物たちの細やかな心理描写がせつなく美しい、しっとり情緒的な歴史小説です。私のお気に入りは「西行と頼朝」の章。西行が頼朝と対面し、相克する頼朝義経兄弟の濃密な関係について思いをめぐらせます。
★★★★★
  
残夢 郁朋社 ハードカバー 2002
  義経が育てた頼朝の子、梓。血の愛憎の果てに何を見る。――鎌倉時代を舞台に描く歴史群像劇――
すみません…管理人の拙作でございます。第2回中近世文学大賞(2001年)応募作品。文学賞主催の郁朋社から02年5月に出版されました。諸先生の名著とならべて紹介するのは僭越ですがお許しください。鞍馬を出て伊豆の頼朝のもとに立ち寄った少年義経は、殺されそうになっていた兄の子(伊東の姫との子)千鶴を救ってともに奥州に逃げ延びます。梓と名づけられたその少年は義経を慕い、実の父である頼朝を義経の仇と憎み、義経の遺児を育てつつ頼朝暗殺の情念を燃やしますが…。源氏一族の「血」の葛藤と愛憎がテーマ。とはいっても別にドロドロしておらずごくシンプルで読みやすいストーリーだと思います。未熟な点も多々あってお恥ずかしいですが変化球「義経」モノとして試しにご一読いただけたらうれしいです。ちなみにこれを書いた当時と今では私のなかの頼朝観がだいぶ変わってしまってる…。
☆☆☆☆☆(←ご自由に評価を)
  
義経

宮尾登美子
NHK出版 ハードカバー 2004
  ※新潮文庫より文庫として再版
05年大河「義経」の原作者である宮尾氏の、華麗にして悲劇的な義経の生涯をたどる書き下ろしの一冊。小説のかたちをとっていますが「宮尾本平家物語」からの引用が多く、エッセイ的要素が強いので読みやすく、宮尾氏の義経観がよくわかっておもしろい。人気者ゆえいろいろ言われるけれど義経の「やさしさ」はすばらしいものだ、とのお言葉にはいち義経ファンとしてほろりとさせられました。でもやっぱり何はさておき平家びいきの方だから、源氏(義経はともかく頼朝…)への憎しみが行間からじわぁ〜っと伝わってきます。
★★★
  
天馬、翔ける
(上下)

阿部龍太郎
新潮社 ハードカバー 2004
  混迷の時代を苛烈に駆け抜けた義経の物語。義経と後白河法皇との強い結びつきが特徴的。義経主役ながら頼朝サイドもたっぷり描かれてます。ただし…「〜ずら」口調の無神経な田舎女・政子、いつもグチグチ根暗な頼朝、関西弁のセクハラおやじ後白河法皇…とにかくみなさん性格悪っ!登場人物の心理描写がえぐすぎてヘコみます。そんななか主人公の義経はやや情緒不安定ながら比較的ノーマルな好青年。そんな彼に寄りそう静御前もはんなり京言葉でたまらなくキュート。心洗われるかわいいカップルです。しかし義経が奥州に落ち延びてほっと一息、というところで終了。そんなあ!あとちょっとだけなんだから最期まで書いてよ〜!
★★★
  
仮面の義経
迦楼羅の面に秘められた謎

伊井 圭
イーグルパブリシング 新書 2004
  五条大橋で弁慶が出会った「遮那王」はなぜか迦楼羅の仮面で素顔を隠し、ただひたすらに平家打倒の宿願に燃えていた。彼に仕えるようになった弁慶は面をつけている時と外している時の義経の様子が微妙に異なることに気づき…。一人二役、二人一役など、登場人物たちの設定にアッと驚く仕掛けがあって興味津々で最後まで読めます。弁慶は狂言回し的存在で、幾重にも張りめぐらされた謎に翻弄されます。逆にすべてを知る男として常陸坊海尊が登場。キーパーソンは藤原忠衡と喜三太です。義経の正体については…正直ちょっと肩透かしかな…。
★★★
  
義経、世界制覇の夢

豊田孝次
新風舎 ハードカバー 2005
  歴史の常識をくつがえす新しい義経像・命を棄てて義経の考えを満天下に訴えた静御前の叫びを聞け!
せっ…世界制覇っすか?そりゃすごい。表紙を飾る“実写”静御前(誰なんだろう)もインパクト大。静御前が鶴岡八幡宮で歌った唄は「大陸に渡って力をつけこの国を世直しする!」という義経の壮大な夢を代弁したものだった…というぶっとび設定。義経と大陸=ジンギスカンを結ぶ大胆(強引?)仮説がふんだんに盛り込まれています。「義経は平泉で死んだ」派の私には正直どうでもいい仮説ですが、義経と静の純粋でせつないラブストーリーが軸になっているので読みやすいです。
★★★
  
兄者
〜義経の血霊〜

西川右近
だいわ文庫 文庫 2007
  頼朝・静・義経、そしてフビライ!血脈が織りなす宿命の歴史ドラマ!
源平合戦只中の日本とチンギス・ハーンの活躍するモンゴル、ふたつの国の歴史と人間ドラマが同時進行で描かれる時代小説。義経とチンギスは別人ですが、優しい性格や容姿などキャラクターはうりふたつ。ただ違うのは「血」への思い。血を信じながら血族(兄)に憎まれる義経、血のつながらない家族と心通わせ助け合うチンギス。結論としては血なんかにこだわるな!ってことですが、それでも、義経とチンギス、どちらの生き方もさわやかで好ましいものとして描かれています。そのぶん頼朝がドス黒い。また静御前のひたむきな愛は泣かせます。源平合戦から元寇までいっちゃうスケールの大きな物語ですが、その壮大な世界で己の愛を貫いたひとりの女性のラブストーリーともいえるでしょう。
★★★
  
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